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症状について

不安障害(社会不安障害・全般性不安障害)

はじめに

ここでは、社会不安障害と全般性不安障害についてご説明します。

これらはまだ原因がはっきりしていませんが、有効な治療法が次第に確立されてきています。原因がはっきりしないのに治療法が確立されてきていることは、奇異に思われるかもしれません。

しかし、医学の世界では病気の発見後、現場での試行錯誤から治療法が発見され、その治療法の作用メカニズムを研究することで病気の原因が判明することが、しばしば見受けられます。

社会不安障害

異常なあがり症…人前で何かをしようとした時に不安に襲われ、極度に緊張する病気

社会不安障害で多くみられるのが、“異常なあがり”症というべき症状で、人前で話をするとき、強度の不安と緊張を感じ、混乱におちいります。このような症状は、昔から「対人恐怖」や「赤面恐怖」と表現されてきました。
また、自宅などくつろいだ状態では普通に話せるのに、学校などある一定の場面ではまったく発声ができなくなる例があり、これを「場面緘黙(ばめんかんもく)」といいます。

人が見ていると手が震えて字が書けない「書痙(しょけい)」という症状もあります。以前は、この症状は性格的なもので、精神力で克服すべきものとされていました。しかし、精神力や心がけではこの傾向が改善しない人々が多くおり、1つの疾病群と考えられるようになりました。頻度は2%と報告されています。

治療

ここ数年、不安に有効な薬と行動治療(p.91)を併用することで、治療成績は大幅に向上しました。

社会不安障害を克服するための治療法の中心は、認知行動療法です。まず恐怖に感じていることが自分だけの思い込みに過ぎないことを学び、認知を修正し、次に恐れている状況へ恐怖感の少ないことから強いことへ、段階的に挑戦する行動療法を行います。これをエキスポージャー(暴露)と呼びます(パニック障害のときの行動療法と基本的には同じです)。

この際、恐怖心が非常に強くてエキスポージャー課題に取り組めない人が少なくありません。このようなときは、恐怖・不安を軽くするのに効果のあるSSRIを用いると、エキスポージャーが実行しやすくなります。

しかし、社会不安障害の人が受診にいたるまでには、大きな関門があります。それは、医療関係者も含めた社会一般の人々にこの病気に対する認識が不足していることもさることながら、この病気の人はその病気の性質上、なじみのない人に会うのが苦手ですから、たとえ自分の状態に困っていても、それよりもっと耐え難い、初めて会う医師への受診(いうなれば社会的な出会い)を回避しがちな点です。

病的ではない“あがり”傾向の性格の人は大勢います。しかし、程度がはなはだしく社会生活に困難を感じる場合は社会不安障害が考えられますから、早期の受診がのぞまれます。

全般性不安障害

全般性不安障害とは?

どんな病気?・・・心配が次々に現れて、心を占領してしまいます。

全般性不安障害も、ごく最近知られてきた病気です。日常生活では誰でも不安や心配になることがありますが、それには理由や根拠があり、なんとか耐えることが出来ます。しかし、この「全般性不安障害」の不安はとりたてての理由もなしに、ふと、こころに浮かびます。対象を変えながら途切れることなく、次々と現れます。

また、絶えず、何か悪いことが起こるのでないか、失敗するのでないかといったような心配事に心が占領されて、気持ちのやすらぐときがありません。そしてこのとき特徴的なことは、心配事の内容が日常的な出来事で、仕事の責任、家の経済状態、家族や自分の健康などで、周囲の人からみれば、“取り越し苦労”的なものが多いことです。そして、本人も心配しなくてもよいということがわかっていることが多いのです。しかし、いくら大丈夫、問題ないと自分にいいきかせても心配をコントロールできません。いわば、“取り越し苦労”が1つ生まれると、その心配は次の心配を呼び寄せます。間断なく数珠つなぎになって心配事が現れる状態と考えてください。

取り越し苦労とはいえ、常時、心配事をかかえていることは、大変なストレスです。イライラしやすく、リラックスできません。このような状態が長期間続くと疲れやすく、物事に集中できなくなります。こころだけでなく、身体的にも筋肉が緊張して肩や首がこったり、筋緊張性頭痛、筋肉のけいれんを生じます。そのうえ寝つきが悪く、眠りが浅い睡眠障害を引き起こします。

全般性不安障害の生涯有病率は約3~5%と非常に多い病気で、女性に多くみられます。しかしこの病気のために精神科を受診することは少なく、心配し続けた結果生じる身体の変調の治療を求めて、精神科以外の科を受診するケースが大部分です。

またパニック障害をはじめとする不安障害やうつ病などで受診した患者さんを注意深く診察すると、全般性不安障害も同時にもっていることが見つかる場合がよくあります。訴える症状の中に「不安」が含まれている患者さんの30%~40%に、全般性不安障害がみられるという報告もあります。

治療

症状の中でも、身体的な緊張や不眠は抗不安薬のベンゾジアゼピンによって速やかな改善が期待できます。連鎖的に現れる不安・心配に対しては、効果が現れるまでに多少時間がかかりますが、SSRIの有効性が期待されています。

心理療法では、自分の不安・心配の受け止め方が偏っているのではないかと検討し、認知の誤りを訂正する認知療法が有効です。

全般性不安障害の患者さんは、過剰な不安や心配との長年の付き合いから、自らを“苦労性”と“心配性”と形容し、性格的なものと思いこんで、病気の可能性に気がついていません。悪いことを予感し、それを避けるために日常行動も狭い範囲に限られ、生活の質は低下しています。病的な不安を治療するためにも、全般性不安障害の正しい知識が大切といえます。


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